研究対象の疾患

結節性硬化症(TUBEROUS SCLEROSIS COMPLEX; TSC)

■主任研究者
順天堂大学大学院医学研究科分子病理病能学/小林敏之

想定される薬効機序

原因遺伝子であるTSC1あるいはTSC2の産物の複合体は、低分子量Rhebを介して、mTORC1の活性を抑制している。従って、原因遺伝子の変異によりmTORC1の異常な活性亢進が生じ、それが各種の病態発生の原因の一つとなっている。シロリムスによるmTORC1の抑制は、病態の抑制に直接的に効果を示し、現在、TSCに合併するリンパ脈管筋腫症(lymphangioleiomyomatosis; LAM)、顔面の血管線維腫などの皮膚病変に対し保険適応薬となっている。

疾患における効果

LAMでは、シロリムス投与により、呼吸機能低下を抑制して安定化させる効果が認められ、肺移植を必要とする重症例の数が減少している。また、皮膚病変へのシロリムスゲル製剤塗布による治療では、顔面の血管線維腫の縮小や色調(赤み)の改善、白斑が目立たなくなる、等の効果が現れている。いずれの場合も、病変が消失あるいは治癒するわけではなく、治療の中断により症状が再燃および進行することがわかっている。