研究対象の疾患

難治性脈管異常(脈管腫瘍・脈管奇形)

■主任研究者
岐阜大学医学部附属病院小児科/小関 道夫

疾患の説明

脈管腫瘍・脈管奇形(脈管異常: vascular anomaly)とは、主に小児期に発症する血管およびリンパ管の形成異常であり、臨床現場では“血管腫” “リンパ管腫”と呼ばれています。この中で、顔面・四肢に広範囲な切除不能病変によって、整容面、機能面に障害が生じたり、頚胸部に浸潤し致死的な呼吸障害を起こす、あるいはカサバッハ・メリット現象(Kasabach-Merritt phenomenon: KMP)など重篤な出血傾向を示す症例を「難治性脈管腫瘍・脈管奇形」と呼びます。代表的には、KMPを起こすカポジ型血管内皮腫、房状血管腫や、リンパ管腫(最近はリンパ管奇形と呼ばれる)、リンパ管腫症、ゴーハム病、静脈奇形、青色ゴムまり様母斑症候群、混合型脈管奇形、クリッペル・トレノネー・ウェーバー症候群があります。

想定される薬効と効果

近年、PI3K/AKT/mTOR経路の遺伝子変異が、本疾患の原因や病態に関与しているということが解明され、これらをターゲットとした新規治療薬の開発が進められています。その中でもシロリムスは、本疾患に対する新規治療薬として注目され、2009年より米国で臨床試験が開始され、57例中47例 (82.5%)に有効性が認められたと報告されました。他にも多数の文献報告が相次ぎ、その治療効果に期待が寄せられています。これらの疾患はシロリムス投与によって、病変の縮小や、症状の改善が得られています。

研究の進捗状況

研究班では適応拡大を目指し、2015年よりノーベルファーマ株式会社と提携し、2016年よりAMED臨床研究・治験推進研究事業「難治性リンパ管異常に対するシロリムス療法確立のための研究」班において、2017年より「難治性リンパ管疾患に対するNPC-12T(シロリムス)の有効性及び安全性を検討する多施設共同第Ⅲ相医師主導治験」を実施しました。また「難治性血管・リンパ管疾患に対するシロリムスの安全性及び有効性を検討する多施設共同非盲検非対照試験(特定臨床研究、jRCTs031180290)」、「難治性の脈管腫瘍・脈管奇形に対するNPC-12T(顆粒剤・錠剤)の有効性及び安全性を検討する多施設共同第Ⅲ相医師主導治験」を実施しています。これらの試験によって、薬事承認が下りれば、世界初となります。
また本研究班では、治療法開発の中で、特に小児に対して有効かつ安全な投与法を確立するため、貴重なデータを使用した母集団薬物動態解析や、モデルマウスを使用した前臨床試験、薬理作用の解明、遺伝子解析、バイオマーカー検索なども進めています。私達の目標は、世界的に先進性、新規性のある臨床研究、治験を基に、難治性脈管腫瘍・脈管奇形に対する画期的分子標的治療法であるシロリムスの開発研究を行うこと、および遺伝子をターゲットとした新しい“脈管異常のゲノム診療”に結び付く研究を行うことです。

関連リンク

■リンパ管疾患情報ステーション
(リンパ管腫、リンパ管腫症、ゴーハム病などのリンパ管疾患について、患者さんを対象とした情報提供をしています)
http://www.lymphangioma.net/

■The International Society for the Study of Vascular Anomalies (ISSVA)
(国際的な脈管異常学会のHP)
https://www.issva.org/