特発性多中心性キャッスルマン病(iMCD)
■主任研究者
長崎大学大学院医歯薬学総合研究科先進予防医学共同専攻 リウマチ・膠原病内科学分野/ 川上 純
想定される薬効機序
シロリムスは細胞の分裂や増殖、生存などを調節する哺乳類ラパマイシン標的タンパク質(mammalian target of rapamycin: mTOR)の作用を阻害することで免疫反応を抑制すると考えられている。mTORは細胞内では複合体を形成して機能するが、mTORにはmTORC1とmTORC2がある。シロリムスは細胞質タンパク質FK結合タンパク質12(FKBP12)へ結合し、シロリムス-FKBP12複合体を形成する。この複合体は主にmTORとraptorの結合を阻害し、mTORC1を抑制することでS6Kのリン酸化を阻害し、PI3K/Akt/mTOR signaling pathwayを減弱させ、薬効を発揮すると考えられる。
疾患における効果
少ない症例数ではあるが、既存治療が無効であった症例にシロリムスが有効であった報告1)2)や、血漿蛋白アレイのpathway解析の結果、PI3K/Akt/mTOR経路が最もiMCD増悪に関与しているという報告3)があり、IL-6阻害薬効果不十分例への有効性が期待されている。本邦でもトシリズマブ効果不十分の特発性多中心性キャッスルマン病を対象としたシロリムスのプラセボ対照ランダム化二重盲検並行群間比較試験(医師主導治験)が進行中である(臨床研究実施計画番号 jRCT2071190029)4)。
参考文献
1) David C. fajgenbaum, et al. J Clin Invest. 2019; 129: 4451-4463.
2) David C fajgenbaum, et al. Blood. 2017; 130: 3593.
3) Sheila K Pierson et al. Am J Hematol. 2018; 93: 902-912.
4) Koga T, et al. Medicine. 2020; 99: e20710.