限局性皮質異形成(FCD)II型 てんかん
■主任研究者
昭和大学医学部小児科学講座 昭和大学病院てんかん診療センター/ 加藤光広
想定される薬効機序
限局性皮質異形成focal cortical dysplasia (FCD)は、難治性てんかんの外科切除病変で認められる特異的な病理像を呈する疾患単位である。FCDの病理像は、皮質層構造の異常と異常細胞の出現を特徴とする。皮質層構造の異常が主体でMRIでは検出が困難なI型、皮質層構造の異常に加え異常細胞(dysmorphic neurons/balloon cells)を認めるII型、皮質の形成異常に加え海馬硬化、脳腫瘍、破壊性病変などを伴うIII型に分類される。FCD II型ではMTOR遺伝子もしくはmTOR経路遺伝子の機能獲得型変異が認められる。細胞実験およびヒト病理標本では、mTORの著しい活性化が示され、モデル動物ではシロリムスによる異常細胞の正常化とけいれん発作の抑制効果が認められる。
疾患における効果
FCD II型は乳幼児期にてんかん発作を発症する。強直発作や強直間代発作で発症することが多いが、発症年齢が早い場合は年齢によって発作型が変化し、部分発作(焦点発作)が認められる。てんかん発作は難治であり、症状が進行すると、認知機能の障害や片麻痺などの局所症状が出現する。薬剤の有効性は17%のみでその効果は一時的であり、現状では外科手術しか治療法がない。しかしその有効性は50-65%にとどまる。FCDにおけるてんかん発作の発症機序は、FCD自体のてんかん源性に起因すると考えられている。FCDのてんかん発作に対するmTOR阻害剤の効果はこれまで報告されていない。しかし、FCDと同じくmTOR活性化を病態とする結節性硬化症のてんかん発作に対して、mTOR阻害剤の有効性が示されている。
実用化までのロードマップ
2017年度にPOC取得のための先行臨床研究を行った。大きな有害事象はなく、けいれん発作の減少を認めた。2018年度から2020年度にかけて「限局性皮質異形成 II型のてんかん発作に対するシロリムスの有効性と安全性に関する無対照非盲検医師主導治験」(FCDS-01)を行った。2019年度から継続投与試験として「限局性皮質異形成II型のてんかん発作に対するシロリムスの安全性に関する臨床研究」(FCDS-02)を行っている。
治験の状況
治験名 | 区分 | 対象 | 製剤 |
---|---|---|---|
第II層 無対照非盲検試験 | 自主臨床研究 | 小児/成人 | 錠剤 |
FCDS-01第II層 無対照非盲検試験 | 医師主導治験 | 小児/成人 | 錠剤 |
FCDS-02継続試験 | 特定臨床研究 | 小児/成人 | 錠剤 |
治験情報の関連リンク
■限局性皮質異形成(FCD)研究会FCD Consortium ホームページ
http://plaza.umin.ac.jp/~fcd_com/sp/index.html