シロリムスはmTORC2も阻害する
2021年01月29日/研究の動向
従来、シロリムス(ラパマイシン)はmTORC1を阻害するがmTORC2は阻害しないとされていました。
ラパマイシン-FKBP12複合体はmTORのFRB(FKBP12-Rapamycin Binding)ドメインに結合して活性を阻害します。
mTORC2ではrictorがmTORに結合しますが、FRBドメインを覆っているため、FKBP12-ラパマイシン複合体がmTORにアクセス出来ず、活性を阻害しません。
しかし翻訳されたばかりのmTORは他の因子が結合していないため、FKBP12-ラパマイシン複合体が結合できます。そのためmTORC2が形成されず、結果としてmTORC2の活性阻害が起こります。
すでに存在するmTORC2には作用しないので、阻害には長期的な投与が必要となります。
細胞種によって効果が異なるとされていますが、臨床で使用するような「長期」であれば全ての細胞に作用すると考えられます。mTORC2は細胞の生存や形態に影響を与えるので、シロリムスが臨床適用される疾患も増える可能性があります。
文献
Prolonged rapamycin treatment inhibits mTORC2 assembly and Akt/PKB.
Sarbassov DD, Ali SM, Sengupta S, Sheen JH, Hsu PP, Bagley AF, Markhard AL, Sabatini DM.Mol Cell. 2006 Apr 21;22(2):159-68. doi: 10.1016/j.molcel.2006.03.029.